企業の経済活動が多様化し、従来は一か所で仕入・生産・販売・管理等をしていたのが、国内外の各拠点で業務を分担するような複雑な形態をとるようになって久しいです。 この傾向はますます加速するのに対し、国際課税ルールや各国の税制は対応しきれていないため、一部の多国籍企業が税制の抜け穴を上手にくぐり抜けて税負担を軽減しようとする動きが顕著化しています。 このような租税回避はBEPS(Base Erosion and Profit Shifting)と呼ばれていて、近年、世界中で最もホットな税務トピックスとなっています。

 

しかしながら、各国の税制の隙間をついて納税額の軽減を図るには、ある程度の事業規模の多国籍企業でなければできないことで、海外に1~2ヶ所程の拠点を保有する中小企業では、このような租税回避はかなわず、納税の不公平が生じてしまいます。

上記のような問題の解決に向けて、OECD租税委員会は2012年に 『BEPSプロジェクト』 を立ち上げ、翌年には『BEPS行動計画』 を公表しました。 インドネシアはOECD加盟国ではありませんが、G20のメンバーとして当該計画に参画しています。 2016年12月30日に発表直ちに施行開始となった、移転価格文書作成に関わる財務大臣規則No.213/PMK.03/2016は、前述の 『BEPSプロジェクト』 で打ち立てた「行動計画1~15」のうち、13にあたります。 ちなにみ、全行動計画は下記のとおり。

 

1.電子経済の発展への対応

行動計画1: 電子経済の課税上の課題への対処

電子商取引等の電子経済に対する直接税・間接税の課税上の課題への対応を検討

 

2.各国制度の国際的一貫性の確立

行動計画2: ハイブリッド・ミスマッチ取り決めの効果の無効化

金融商品や事業代に関する複数国間における税務上の取り扱いの差異の効果を無効化するため、国内法上・租税条約上の措置を検討

行動計画3: 外国子会社合算税制の強化

軽課税国等に設立された外国子会社を助かったBEPSを有効に防止するため、適切な外国子会社合算税制を検討

行動計画4: 利子控除制限ルール

総体的に税負担の軽い国外関連会社に課題に支払われた利子について損金算入を制限するルールを検討

行動計画5: 有害税制への対抗

各国優遇税制の有害性を経済活動の実質性から判定するための新基準および制度の透明性を高めるための新基準を検討

3.国際基準の効果の回復

行動計画6: 租税条約の濫用防止

条約漁り(第三国の居住者が不当に条約の得点を得ようとする行為)をはじめとした租税条約の濫用を防止するため、OECDモデル租税条約の改定および国内法の設計を検討

行動計画7: 恒久的施設(PE)認定の人為的回避の防止

PE認定の人為的な会費に対処するためのOECDモデル租税条約のPEの定義について検討

行動計画8~10: 移転価格税制と価値創造の一致

行動8: 適正な移転価格の算定が困難である無形資産を用いたBEPSへの対応策

行動9: グループ内企業に対するリスクの移転、過度な資本の配分等によって生じるBEPSの防止策

行動10:その他移転価格算定手法の明確化やBEPSへの対応策

 

4.透明性の向上

行動計画11: BEPSの規模・経済的効果の分析方法の策定

BEPSによる法人税収の逸失規模について、データの評価・指標の抽出・分析方法の策定を実施

行動計画12:  義務的開示制度

プロモーターおよび利用者が租税回避スキームを税務当局に報告する制度(義務的開示制度)を検討

行動計画13:  多国籍企業の企業情報の文書化

共通様式に基づいた多国籍企業情報の報告制度を検討

 

5.法的安定性の向上

行動計画14:  相互協議の効果的実施

租税条約に関連する紛争を解決するためのより実効的な相互協議手続きを検討

 

6.BEPSへの迅速な対応

行動計画15: 多数国間協定の策定

世界中の二国間租税条約にBEPS対抗措置を効率的に反映させるための多数国間協定を検討

 

 

移転価格文書に関わる新規則(No.213/PMK.03/2016)について ➁」