インドネシア会計

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キッャシュ・フロー計算書  財務諸表の読み方 その3

最後のテーマはキッャシュ・フロー計算書です。

キャッシュ・フロー計算書とは

時々、お客様から「うちの会社は赤字なのに、なんで現金があるんだ?」とか、「利益は毎年増加しているのに、現金が増えていないのはなぜ?」といったご質問を受けることがあります。経理業務や簿記学習のご経験がある方にとっては、あたり前かもしれませんが、現在の会計の世界では「利益=現金の増減」という関係が成り立っていません。

前々回に貸借対照表の解説の時に使った例題を使って、説明したいと思います。

例題

1月31日

Aさんは、自己資金100円でA商事を設立しました。設立と同時にA商事は銀行からも100円借り入れています。

2月28日

A商事は150円の商品を現金で仕入れました。

3月31日

A商事は150円の商品を200円で売却をしました。そして、銀行から借りていた100円を返済しました。

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1月31日の段階では、借入金も併せて、現金が200あります。そして2月28日には、現金150を使って商品を購入しており、結果的に現金は50となっていますが、この現金150の減少は損失ではなく、商品に投資しているだけで利益に影響を与えておりません。3月31日では、この商品を200で売っており、現金は250となりましたが、同時に借入金の返済も済ませたため、現金は150となっています。最終的に現金が50減少しましたが、利益は50増えています。この例題からも、「利益=現金の増減」の関係が成り立っていないことが分かっていただけると思います。利益は会社にとっては、とても重要な指標ですが、現金の情報も重要です。たとえ利益が出ていたとしても、現金がショートしてしまえば、黒字倒産になり、現金さえあれば赤字でも倒産を回避できます。ただし、PLとBSからでは会社の現金の流れを正確に把握することはできませんので、キャッシュ・フロー計算書(C/F)が重要な役割を担っています。

キャッシュフロー計算書読み方

キャッシュ・フロー計算書(C/F)は一定期間の現金の増減を説明した財務諸表です。

C/Fの作成方法はいくつか形式がありますが、今回は一番シンプルな形式をご説明します。C/Fでは、現金の増減を三つの区分に分けて計算します。この区分の違いを認識することがポイントです。

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・営業活動によるキャッシュ・フロー

本業に関する現金の流れが計上されます。売掛金の回収による入金や、商品の購入代金や給与の支払いによる出金は、ここに計上されます。純粋な本業の部分ですので合計金額はプラスが望ましいです。

・投資活動によるキャッシュ・フロー

設備投資や事業投資に関する現金の流れが計上されます。例えば、固定資産を購入したり、他の事業会社の株を購入した場合の出金、株や固定資産を売却した場合の入金は、ここに計上されます。

投資活動によるキャッシュ・フローは合計額がマイナスであっても、必ずしも悪いわけではありません。固定資産の購入は本業の収益獲得に貢献することになり、他の事業会社への投資は、配当などで将来の入金を見込むことができるからです。

・財務活動によるキャッシュ・フロー

借入や返済、株主からの資金調達による現金の流れを計上します。例えば、借入をした場合の入金は、ここに計上されます。財務活動によるキャッシュ・フローがプラスだからといって安心はできません。借入の場合、いずれは返済の必要があり、金利も発生するため、将来の出金の増加につながります。

 ・直接法と間接法

上記の表示区分とは別の論点で、C/Fの作成方法には直接法と間接法の二つの様式があります。

1.直接法:各取引から直接キャッシュ・フローを集計して作成する方法

2.間接法:BSとPLの各勘定の増減から間接的に作成する方法

かつては間接法の方が、直接法に比べ簡単に作成できるため、間接法でC/Fが作成されていました。しかし、現在の会計ソフトウェアの使用を前提した場合、直接法でも簡単にキャッシュ・フローの集計が行えるため、あえて間接法を採用する企業は減っています。また様式を統一する観点から、各国で直接法での運用が推奨される傾向にあります。

 

投資システムの発展と会計

 

全三回で財務諸表の読み方について解説をしました。今回は簡略な数字を使いながらでしたが、実際の財務状態は非常に複雑です。会計・財務諸表の複雑化の歴史は、経済活動の多様化の歴史そのものと言えます。

大航海時代、航海に出る船の資金調達のために、投資システムが利用されました。資本家達が出資をして、航海の準備をさせ、航海の収益に基づいて、投資家が分配を受ける仕組みです。船が航海から無事に帰ってきた場合、海外で入手した香辛料や貴重品はもちろん、航海で使った船も全て売り払い、一旦清算をして、残った金額が投資家に分配されました。実はこの計算をするのに、原始的な会計と簿記が使われました。一旦、全て清算して現金化するため、航海前の出資金と航海後の現金残高の差額で儲けを把握したのです。この時代「儲け=現金の増加額」が成り立っていました。

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この大航海時代の投資システムは現在の株式会社の原型の一つと言われています。しかし、現在の企業の活動は、船の航海よりも複雑です。船は一つの「航海=投資」のみですが、企業は同時に異なる投資を複数行っています。船のように一回の「航海=投資」毎に清算をすれば、最終的に残った現金で儲けを把握することができます。しかし、現実的に会社を投資別に区切って、清算することは不可能です。そのため企業会計では、会計年度で区切りをつけて、「儲け=利益」の計算をするようになりました。

更に適切な利益を計算するため、固定資産や減価償却という考え方も考え出てきました。そのため、現在の企業会計は「儲け=利益≠現金の増減」という関係になっています。しかし、現金の情報に対する重要性が低下したわけではなく、例えば、利益が出ていても資金繰りが悪化すれば、会社は倒産することもあります。現金の情報は会社の存続に直結するため、近年では現金情報の重要度が増し、B/S、P/Lとは別にC/Fが作られるようになりました。今後も企業活動、投資活動の変化に伴い、財務諸表の様相も変わってくることと思います。

 

以上、簡単ですが財務諸表の読み方のご説明をいたしました。

 

 

 

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